今回はこんな方々に向けた記事になります!
- 「人事労務関係の実務を行っている」
- 「社労士試験対策の法改正を学習中である」
- 「自己研鑽のためにも最近の人事労務の法改正が知りたい」
1. 2022-2023年社労士・人事労務界隈での主要法改正
2022年から2023年にかけても多くの社会保険制度で重要な法改正が行われました。
その中でも多くの人に影響力が大きいものと言えば、以下の3点でしょう。
- 雇用期間2か月以内の健保被保険者の対象拡大
- 特定適用事業所の適用拡大
- 確定拠出年金制度にかかる各種条件緩和・適用拡大
その他にも避けられない重要な話題が沢山あります!
順番に見ていきましょう。
①【健保】雇用期間2か月以内の被保険者の対象拡大
これまで、2か月以内の期間を定めて雇用される場合は、健康保険・厚生年金保険の適用除外となっていましたが、2022年10月から、当初の雇用期間が2か月以内であっても、当該期間を超えて雇用されることが見込まれる場合、雇用期間の当初から健康保険・厚生年金保険に加入となることとなりました。
以下のいずれかの条件に当てはまることが必要とされています。
- 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
- 同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
②【健保】適用事業所の業種に士業が追加
2022年10月1日より、次の適用対象となる士業の個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は、健康保険および厚生年金保険の適用事業所となることになりました。
【適用の対象となる士業】
弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、弁理士
③【健保】特定適用事業所の規模要件の変更
2022年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大により、特定適用事業所の規模要件が緩和されることとなりました。
【法改正前後の変更点まとめ】
- 「特定適用事業所」の要件
(変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
(変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所 - 「短時間労働者」の適用要件
(変更前)雇用期間が1年以上見込まれること
(変更後)雇用期間が2カ月を超えて見込まれること(通常の被保険者と同じ)
また、令和6年(2024年)には更に要件が緩和される予定なので、記憶の隅に留めておきましょう。
対象 | 平成28年10月~令和4年9月末日 | 令和4年10月~(現行) | 令和6年10月~(改正) |
---|---|---|---|
特定適用事業所 | 被保険者の総数が常時500人超 | 被保険者の総数が常時100人超 | 被保険者の総数が常時50人超 |
短時間労働者 | 1週の所定労働時間が20時間以上 | 変更なし | 変更なし |
月額88,000円以上 | 変更なし | 変更なし | |
継続して1年以上使用される見込み | 継続して2カ月を超えて使用される見込み | 変更なし | |
学生でないこと | 変更なし | 変更なし |
④【健保】育休中の保険料免除要件の見直し
育休中の保険料免除要件について、以下の2点が2022年10月から法改正されています。
【毎月の報酬にかかる保険料の免除】
- (変更前)開始日の属する月と終了日の属する月が同一の場合は、終了日が同月の末日である場合を除き、免除の対象とならない
- (変更後)令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合も免除となる
【賞与にかかる保険料の免除】
- (変更前)育児休業等期間に月末が含まれる月に支給された賞与にかかる保険料が免除の対象でした。
- (変更後)令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、当該賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える育児休業等を取得した場合に限り、免除の対象となる。
⑤【国年】70歳以降の受給選択にかかる特例みなし増額
2023年4月1日より、年金を受け取る権利が発生してから5年経過後に、繰下げ受給の申出を行わず老齢基礎(厚生)年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合、請求の5年前に繰下げ受給の申出があったものとみなして、増額された年金を一括で受け取ることができることとなりました。
これによって、より多くの方が繰り下げ受給の恩恵を受けられることとなりそうですね。
なお、以下の場合には、この特例的な繰下げみなし増額は適用されません。
- 繰下げの申出をすることができる方に該当しないとき
・65歳(受給権発生日)時点で他の年金たる給付が発生している場合
・65歳(受給権発生日)から1年以内に他の年金たる給付が発生している場合
・請求者が死亡している場合 - 80歳以降(受給権発生から15年経過後)に本来請求したとき
- 本来請求の5年前の日以前に他の年金たる給付が発生している場合
⑥【厚年】障害者・長期加入者の特例的定額部分受給の経過措置
先に2022年10月1日から、健康保険及び厚生年金の被保険者拡大、特定適用事業所の要件緩和に触れてきました。
この法改正が「障害者又は長期加入者(44年以上)の特例に該当する老齢厚生年金の受給者」に当てはまった場合、老齢厚生年金の定額部分の受給停止となってしまい、彼らの受給できる年金額が減少してしまう可能性があるのです。
その激変緩和措置として、対象者は届出を行うことで、年金の定額部分を引き続き受給することができる経過措置が実施されてることとなったのです。
⑦【社一】後期高齢者の医療窓口負担割合の見直し
これまで、75歳以上の方が該当する後期高齢者医療の窓口負担割合については、現役並の所得者以外は一律1割負担とされていました。
それが、2022年10月1日から、課税所得が28万円以上かつ年収が200万円以上(複数世帯の場合は後期高齢者の年収合計が320万円以上)の方も2割負担となることで、負担割合が細分化されることとなりました。
ただし、この改正で必要な受診が妨げられることがないよう、長期にわたり頻回な受診が必要な患者等への配慮として、外来受診に限り、施行後3年間は1か月の負担増を最大でも3,000円とする緩和措置も講じられるようです。
⑧【社一】DCの企業型及び個人型年金にかかる加入可能年齢の拡大
ここからは、全て「確定拠出年金法」にかかる法改正になります。
まず、企業型年金の加入要件についてですが、これまでは65歳未満の者に限定されていた年齢制限が撤廃され、実施事業所に使用される第一号等厚生年金被保険者は加入対象者となりました。
また、個人型年金(iDeCo)の加入要件についても、これまで60歳未満の者に限定されていた年齢制限が撤廃され、原則、国民年金法の第一号、第二号、第三号被保険者及び任意加入被保険者は、個人型年金加入者となることができることとなりました。
これらはいずれも、2022年5月1日から施行されています。
⑨【社一】DCの企業型年金加入者の個人型年金加入の要件緩和
これまでiDeCoに加入できなかった企業型DC加入者(企業型確定拠出年金加入者)の方も加入できるようになりました。
企業側でも退職金にあたる制度として、確定拠出年金を運用する企業が全国でも4割近く存在しています。
そうした企業型の確定拠出年金制度とiDeCoの相性がより良くなるように制度改正されました。
この制度改正により、企業型DCとiDeCoの掛金額を合算して月額5.5万円(年額66万円)まで掛金を拠出できるようになりました。
⑩【社一】DCの企業型及び個人型にかかる脱退一時金の受給要件見直し
まずは企業型年金からの脱退についてですが、個人別管理資産の額が1.5万円を超える者であっても、iDeCoの脱退一時金の受給要件を満たしている者は、資産の移換なしに、企業型DCの脱退一時金を受給できるようになりました
個人型年金(iDeCo)についても、脱退の選択肢が限られていたところ、法改正により、通算の掛金拠出期間が短いことや、資産額が少額であることなどの一定の要件を満たす場合には、iDeCoの脱退一時金を受給できるようになりました。
これにより、より様々な資産形成に向けて方向転換がしやすくなったといえるでしょう。
これらはいずれも、2022年5月1日から施行されています。
2. 目まぐるしく変わる法改正をしっかり押さえておきましょう!
「生活の質の向上」に合わせて、社会保険制度の改正も常に検討され、実施され続けています。
社労士でなくても、人事労務担当者でなくても、この国で生活していく限り、知っておいて損はない情報ばかりです。
- 「少しでも自分が生きやすくなるため」
- 「将来のライフプランを考えるため」
- 「より賢くやりくりしたい」
自身を取り巻く生活環境や社会保険制度の移ろいに少し注目してみませんか。
それでは、また!